偽物マイクについて思うこと。

 日本国内で偽物を販売しても、購入者が気付かない限り、出品者が罪に問われることはありません。

商標を持つ権利者(メーカー、正規代理店等)が利益を生まない2次流通市場を完全に切り捨てているためです。

ブランド価値の棄損と利益を天秤にかけた結果の判断でしょう。

また、たとえ、落札者が気付いたとしても出品者によってはその後の被害回復に膨大な時間と精神的苦痛、費用が掛かる可能性があります。

日本の法律では偽物の証明責任は購入者側にあります。

ところで、ピカピカの偽物のマイクとボロボロの本物のマイク、どちらが価値があると思いますか?

2次流通市場に関わる人間であれば即答します。

ボロボロでも本物のマイク!

もちろん、ボロボロだったら本物というわけではなく、ボロボロの偽物マイクも存在します。

ボロボロで使用感たっぷりの場合、外装からの真贋判定は非常に困難です。

先日、ボロボロの偽物のSHURE BETA57Aを掴まされてしまいました。
しかも、音が出ないという。。。
それで、修理のため分解したところ、ようやく偽物と判明したという始末です。

ヤフオクに限らず中古市場では今日も中華製の偽物のマイクが多数出品されています。

偽物を購入された人は偽物だと気が付いていないのか、偽物でも構わないのか、どちらかだと思います。

多分、偽物でも構わないという太っ腹な人の方が多いのでしょう。

偽物を購入された方に良心と親切心から偽物だと教えても感謝されることはほとんどありませんから。

これは想像ですが、きっと、羞恥心が危機感を上回っているのです。
社会の窓全開を指摘されるようなものなのでしょう。

出品者に偽物だと警告してもそのまま出品され続け落札されます。

運営側に通報しても全く何も変わりません。

私も毎回警告するのに疲れました。

全く報われませんから。

しかし、やはり、良心が咎めるのです。

偽物が平然と売られているのになすすべがないというジレンマをどうにか打開できないか。

いろいろ考え中です。

偽物マイクの怖いところは資産価値が限りなくゼロに近いというところです。

そして、被害者が次は確実に加害者になるというところです。

最初にはっきりさせておきますが、これまで日本で偽物マイクが摘発されたことは一切ありません。

これは商標を持つメーカー、代理店などの権利者の怠慢というよりも、あえて偽物マイクを見逃すことで中古市場を故意に混乱させ、安心な新品を正規販売店で買わせるように仕組んでいるのです。彼らにとって中古マイクの流通は厄介なもの、新品マイクの流通を妨害するものという認識でしかないのです。ゆえに、今後も絶対に偽物マイクを販売する輩が摘発されることはありませんし、偽物を販売したとしても罪に問われることはありません。これが日本の現状です。権利者が動かない限り、偽物は根絶されないのです。

「海外で購入した並行輸入品です。」という商品説明(そもそもその文言が無いことの方が多い。)で新品もしくは新品同様品のマイクを繰り返しメルカリやヤフオクなどの2次流通市場で販売する人がいます。しかし、それは本物マイクの並行輸入ではなく、偽物マイクの直輸入なのです。

「偽物だ。」と指摘すると多分こう言うことでしょう。
「偽物だとは知らなかった。」

そんなはずはありません。
多くの善意ある閲覧者から指摘されたはずです。

それに価格が安過ぎます。
例えば現在定価で50万円くらいするNeumann U87Aiのスタジオセットですが、偽物販売者の仕入れ先であるアリエクスプレスでは偽物を7万円くらいで購入可能です。さらに言えば、Neumann TLM103の偽物は2万円、Neumann KMS105の偽物は6,000円、Shure SM7Bの偽物は1万円くらいです。

マイクの正規輸入販売代理店の側から見てもありえない金額です。

偽物販売者は明確な悪意を持って転売益を得るためだけに偽物マイクを輸入し、無知な第三者に販売しているのです。
実際、2022年のNeumann U87Aiの偽物が大量に流通したときは1000万円以上の被害が発生しました。しかし、偽物マイクの購入者の多くは今なお偽物だと気付いていないのです。

多くの場合、ヤフオクやメルカリなどの販売チャネルでは無知な第三者を助ける手立てはありません。

真実を知っていたとしても傍観するしかないのです。

故に、偽物マイクから自分を守るには自己防衛しかありません。
しかし、偽物マイクの知識と経験がなければこれも不可能です。

万事休す!

ヤフオクやメルカリを利用するマイク愛好家の中には偽物マイクを偽物と知った上でウォッチリストに入れている人が意外と多いです。
どういうことだか分かりますか?
彼らはただ傍観し、無知な購入者がカモになるのを見て陰で笑っているのです。
何てひどい人たちなのでしょう!
人間とは思えません!!
俗に言う「メシウマ」というヤツです。
誰かの不幸は誰かの幸福につながっています。今日、あなたはどこかの誰かのメシのタネになってしまうのです。

ああ、何ということでしょう。

偽物マイクの恐怖を御理解頂けたでしょうか?

あなたが偽物マイクの恐怖から逃れる術(スベ)は一つしかありません。

かくいう私もヤフオクで最初に買ったShure SM58は偽物でした。
今から数十年前の話です。

当時、偽物が存在することを知りませんでした。

近年、技術革新が進み、偽物はより一層精巧になり、プロの業界人ですら偽物を普通に掴まされています。

偽物がどんなに精巧になろうとも、偽物は偽物でしかありません。
絶対に本物には成り得ないのです。

本職、自称、有名、無名に関わらず、エンジニアを称するのであれば、偽物マイクの購入は間違いなく人生の汚点です。
黒歴史の扉を開く鍵に成り得るのです。
そこに良心はありません。
他者を蹴落としてでも自分だけが助かれば良い、偽物マイクの呪いを振り払うことが出来れば何をしても良い。
それだけです。
偽物マイクは巡り巡って最後は無知な購入者のところに落ち着くことでしょう。

偽物マイクは主にC to C(Consumer to Consumer:個人間取引)のプラットフォーム(ヤフオク、PayPayフリマ、メルカリ、ラクマなど)で流通します。また、絶対数は少ないですが、ごく一部は鑑定能力の乏しい中古楽器店、中古買取店などの古物商でも取り引きされます。

これは驚くべきことですが、どことは言いませんが、プラットフォーマーの中には偽物と分かった場合、回収することもなく購入者に廃棄を依頼し、無料で提供するところもあります。

無料で手に入れた偽物マイク、はたして確実に廃棄されるでしょうか?
マイクの廃棄は燃えないゴミとして出す以外の方法はありません。
はたして、何人の人が本当に廃棄するでしょうか?

これは想像ですが、100人の人が偽物マイクを無料で手に入れたとして、100人の内、実際に捨てる人は1人もいないと思います。
90人の人が無料偽物マイクをそのまま使い続けるか友人知人に無料か安価で譲り渡すなどし、残り10人がお決まりの「ノークレーム、ノーリターン」、「現状販売」、「ジャンク」などの文言を散りばめてヤフオクやメルカリなどのプラットフォームで再販し、仕入原価0円の偽物マイクを10万、20万というお金に変えるのです。

こんなおいしい商売はありません。
無料で手に入れた偽物マイクを金に換えることでゼロから巨万の富を生み出す錬金術が可能になるのです。

まさしく、偽物マイクは現代の錬金術の源、賢者の石と言えるでしょう。

このことは先にも書いた

「偽物を購入された方に良心と親切心から偽物だと教えても感謝されることはほとんどありません」

に繋がっていきます。

つまり、偽物マイクの購入が故意である場合があるのです。
無料で商材を手に入れる(業界では0円仕入れと呼びます。)ために偽物マイクと分かった上で購入しているのです。

このように、一見、性善説に基づいた厚意のように見える「購入者の方で廃棄」という措置は2次流通業界を俯瞰した場合においては、プラットフォーマーの怠慢以外の何物でもなく、偽物販売者の懐を潤し、一方で新たな被害者をネズミ算式に生み出し2次流通業界を混迷の渦に巻き込むのです。

何というジレンマ。

もう手の施しようがありません。

知識のない者、経験のない者にとっては偽物マイクは本物として自己完結し、そこに疑念を差し挟むことは一切ありません。本物を一度でも手にしたことがあれば簡単に分かることも最初に手にしたものが偽物マイクであれば、それが本物になってしまうのです。

それはまた逆も然り。
例えば、私には現行の本物のShure SM7Bは偽物に見えます。
SM7BはSM7以来数十年に渡り製造されているマイクですが、業界が長い人にとっては最近のSM7Bは非常に気持ち悪く感じます。
なぜだか分かりますか?
現行のSM7Bと昔のSM7Bとではデザイン面で根本的に大きく違う部分があるのです。

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